コーダ☆マインド

耳の聞こえない親を持つ聞こえるシオンが考える、コーダのことや手話のこと。

手話サークルについてコーダの立場から考える その1

f:id:codamind:20210603215012j:plain

ろう者の生活の中に必ず存在してきた「手話サークル」。
現在(2020年)はサークル事情も昔と比べると変わってきているのかもしれませんが、古き良き文化である手話サークルは日本全国各地にたくさんあります。
手話サークルは日本独自の文化なのだそうですけれど、今回お話したいのはそのことではなくて、手話サークルについてコーダの立場から考えてみたいと思いました。

手話を学んでいる方は手話サークルに入っているかと思うのですが、そこでコーダを見かけたことはありますか?
私はありません。
私自身も手話サークルに関わることをずっとためらっていました。 

コーダの私が手話サークルに行くのをためらっていた理由

単純に人とのコミュニケーションが苦手だったから。
ろう者は好きだけど聴者が苦手だったから(ごめんなさい)。
そして最大の理由がこれです。

手話が下手だったから。

もうこれに尽きます。
手話が下手というか、できなかったというか。
実際は手話はできないわけではないんだけれど、手話での「会話」はほぼできませんでした。
親以外のろう者とほとんど会話したことがないまま、私は大人になってしまったのです。

手話サークルはろう者の大切な居場所

子どもの頃から、手話サークルは私が行くところではないと思い込んで生きてきました。
手話サークルは父(ろう者)が行くところで、私には無関係なところだと思っていたのです。
もう何十年も、父は手話サークルに毎週行っています。
新型コロナウイルスの影響で現在は休止中ですが)
私が赤ん坊の頃から手話サークルに行っているのです。
父が、週に一度サークルに出かけていくことは我が家では普通のことです。
7時だか7時半だかそんな感じの時間には出かけて行き、9時過ぎには家に戻ってきました。
手話サークルから戻った父はいつもニッコニコで、楽しかったオーラ全開。
「今日も楽しかったんだねぇ~~」
と思いつつ、そんな父を見守るという生活を送っていました。
ろう者と喋ってくるのか、聴者と喋ってくるのか。
手話サークルに誰が参加してるのかも私は知りませんが、
「手話サークルはろう者の大切な居場所」
だと私は考えていました。
私の場合はそれが習慣付いていましたので、自分が手話サークルに入るという考えを持ち合わせていませんでした。

私の場合は以上のような理由が主で手話サークルへは行きませんでした。
手話を学び出してからようやく、
「あっ。私も手話サークルに入ってもいいのか!」
「手話を学ぶなら、手話サークルにも入らなきゃ!」
と気がついたのです。

コーダが恐れることば

理由は人それぞれかと思いますが、コーダは人生の中のどこかのタイミングで
「手話をちゃんと覚えよう!」
と思うときがあるのではないかと思います。
ただし、思ったとしても実際に行動を起こすコーダと、そうでないコーダがいます。
行動を起こしたコーダは
「じゃあ、手話サークルに行ってみよう!」
と思うわけですが、手話が苦手なコーダが一番恐れていることばがあります。

「両親がろう者なのに、なんで手話ができないの?」

このことばはコーダの心に大きなダメージを与えます。
ろう者からも聴者からも言われます。
コーダはどちらからも理解してもらえていない現状です。
(このあたりのことは、さらに別記事で書きたいと思います。)
手話ができないコーダは実際に大勢います。
手話が得意なコーダももちろんいますが、手話ができないコーダの方がもしかしたら多いのではないかと私は思っています。
そんなコーダがせっかく「手話を覚えようかな」と思って行ったサークルで、そのことばを言われてしまったら、もうサークルへは足を運べません。

手話ができてしまうコーダ

手話ができないと言うコーダでも、親がろう者であれば、見よう見まねで簡単な手話くらいはできます。
ネイティブろう者並みに手話ができるコーダもいます。
手話ができてしまうがゆえに、普通の聞こえる人たちと比べ、コツのつかみ方や手話のスピードが違います。
ある程度家庭の中で手話を使っているので、感覚もろう者に近いものを持っています(個人差はあると思いますが)。
ゆえに、コーダは手話サークルでは物足りなくなってしまう場合があり、
「自分のペースと合わない」
と感じると手話サークルへは行かなくなります。

手話サークルに馴染めるコーダもいる

コーダも人間なので、性格も様々です。
手話サークルが苦手、または自分には無関係だと思っているコーダの方が多いのだろうとは思うのですが、手話サークルの会長までもこなすコーダがいるのも事実です。
冒頭でも書いたように、私は手話サークルでコーダに会ったことはありませんが(田舎なので、人口の少なさの問題もあるかもしれません)、知り合った他県のコーダたちの話を聞くと、手話サークルでしっかり活動してきたコーダは何人もいます。
現在も手話サークルに通うコーダももちろんいます。

コーダ当事者の気持ちを聞いてみたい

「ろう者だから」、「聴者だから」、と一概に言いきれないように、「コーダだから」とも言い切ることもできないのですが、コーダ当事者の立場から、私の思うことを書いてみました。
「コーダが手話サークルに行きにくい理由」
をテーマに、今度コーダたちで話し合ってみたいです。
コーダたちが、どんな経験をしてきてどんな想いを抱いているのか、いろいろ知りたいと思っています。

<この記事は2020年6月に書いたものを編集したものです>