コーダ☆マインド

耳の聞こえない親を持つ聞こえるシオンが考える、コーダのことや手話のこと。

【ろう児教育支援22】聞こえる子どもたち

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地域の公立小学校(ろう学校ではありません)にて6年間、耳の聞こえない児童ふたり(ソラとリク)に手話を使って支援をしてきたコーダの私(シオン)が感じたことや考えていたことなどを書いています。大勢の聞こえる子どもたちと一緒に過ごした日々を少しづつ紹介。聞こえない世界と聞こえる世界の狭間から見えていた様子を、少しでも感じ取っていただけたら幸いです。

ろう児のクラスメイトである聞こえる子どもたちですが、当然毎日ろう児とコミュニケーションをとっていました。
口話(こうわ)をする子、手話をする子、筆談をする子、いろんな子がいました。
手話は簡単なものを少しと、数字や指文字もうまく使っていました。
黒板もコミュニケーションツールとして上手に活用していて、楽しそうにしている様子は実に微笑ましかったです(黒板やチョークの使い方については厳しく指導しました)。

学校は学習をする場所ですが、教員が一方的に話す授業だけではありません。
班活動などでは、どの子も自分で人とコミュニケーションを取る必要があります。
ろう児が困るのと同様に、聞こえる子たちも困っていました。
片方だけが困るのではありません。
聞こえない側も聞こえる側も困るのです。

「私手話できないよ?どうしたらいい!?」
聞こえる子がこう言います。
こういうとき面白いと感じたのは、私に直接聞いてくる子と、大きめの声でみんなに聞こえるように言う子がいました。
「どうしたらいいと思う?」
私は、質問を質問で返します。
私が答えなくても、大勢いる聞こえる子のうちの誰かがうまくフォローをしていました。

聞こえる子どもたちは、自分と同い年で目線の高さも同じくらいの、聞こえないソラとリクと共に同じ時間を過ごし、共に学びあってきました。
ペアでの活動やグループで活動もありました。
みんな一緒にです。
聞こえるだの聞こえないだの言っていられません。

大事なのは相手の話を分かろうとする姿勢。
相手に伝えようという気持ち。

教室なら鉛筆とノートがあるので筆談できますが、屋外でも体育館でも活動はします。
手や顔、口、身振り(動き)、伝えようとする気持ちを前面に押し出し、聞こえる子たちは一生懸命ソラとリクに伝えます。
ソラとリクは、それを見て、「分かった!」と返事をします。
伝わらなかったときは、「違う違う!こう!!」と、聞こえる子たちはさらに頑張ります。
ろう児も「え?違うの?」といった様子で、もう一度友達の口や動きを見ます。
友達を集中して見て、何と言っているのか分かろうとするのです。
逆に、ソラとリクの声は発音が不明瞭なので、聞こえる子にはなかなか聞き取れません。
うまく聞き取れた子が、「分かった!〇〇だって!!」と言い直してくれ、聞こえるみんなに伝えてくれます。
いつでもみんなで助け合ってコミュニケーションを取っていました。

教員たちと私はそんな様子を見守り続け、必要に応じて支援をする毎日でした。

時間が無いときや緊急時、これ以上は伝えきれないだろうと私が判断したときなどは、私が手話通訳をして伝えることもしましたが、基本的に子ども同士のやりとりには私は入らないスタンスでした。
「シオン先生、ソラとリクに伝えて~」と言われても、
「やだよ~。あなたが自分で伝えなさいよー。」と言い返していました。
「え~~!!?」
とかなんとか言いつつも、聞こえる子どもたちはソラとリクに、どうにかして自分たちで話をしていました。

ろう児ふたりと手話通訳者である私と、6年間一緒に過ごした聞こえる子たち。
彼らは今どうしているだろうと、いつも考えてしまいます。
私は赴任したときから、6年間彼らと一緒に過ごすことが分かっていました。
子どもと仲良くなりすぎないように気を付けていましたし、私は教員では無いので、決して前へ出すぎないようにしていました。
何かあれば必ず担任をとおすようにし、自分の立場がブレないように意識を強く持って、子どもたちへ支援をし続けてきました。

どの子の成長も、愛おしくて仕方がありませんでした。