コーダ☆マインド

耳の聞こえない親を持つ聞こえるシオンが考える、コーダのことや手話のこと。

【ろう児教育支援26】「小学校、むずかしい?」

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地域の公立小学校(ろう学校ではありません)にて6年間、耳の聞こえない児童ふたり(ソラとリク)に手話を使って支援をしてきたコーダの私(シオン)が感じたことや考えていたことなどを書いています。大勢の聞こえる子どもたちと一緒に過ごした日々を少しづつ紹介。聞こえない世界と聞こえる世界の狭間から見えていた様子を、少しでも感じ取っていただけたら幸いです。

算数や国語は漢字はまだ1年生の段階では習っていないので、「さんすう」「こくご」と表記されていました。
そんな頃のエピソードから…。

まだ入学して間もない頃、小さなソラから訊ねられました。

「小・学・校、…むずかしい?」

声を出しながらの手話で、首をかしげて、私にこう訊いてきたのです。
どうやら、ソラは性格も楽観的で小学校はそんなに大変な場所ではないと思って入学してきた様子。
それをどうやら母親にたしなめられたみたいです。

「むずかしいよ~~~~」

私はわざとらしく、そう答えました。
ソラがどうそれを捉えたかは分かりませんが、ソラもリクも毎日元気に登校してきていました。

2時間目が終わると中休みです。
弾丸のように教室を飛び出し、ふたりは聞こえる子どもたちと一緒に遊具などで遊んでいました。
上級生にとても可愛がられ、女の子たちに囲まれているときがよくあり、「可愛い可愛い」ときゃあきゃあ言われながら、面倒を見てもらっていたふたりです。
面白いと思ったのが、ふたごの彼らはふたごの上級生に気に入られており、校内ですれ違えば、ふたご同士でハイタッチをしている様子がうかがえました。
「ふたごにはふたごにしか分からない感覚があるのだなぁ」
とつくづく思ったものです。
男の子のふたごです。
ソラとリクは二卵性なのでまったく似ておらず、すぐに見分けがつくのですが、ふたりが1年生の頃5年生にいたふたごは一卵性双生児で、私にはまったく見分けがつかず、小学校を卒業してもたまに顔を見せに来てくれていたのですが、さらに見分けがつかなくなっていたのを思い出します。

ろう児ふたりはチャイムの音は聞こえるようで、休み時間が終わっても教室に帰ってこないということはありませんでした。
まわりの子どもたちが一斉に撤収しだすので、それで分かったというのもあったとは思いますが。

授業中の音声情報や音情報は私が手話で伝えていました。
1年生の頃の学習内容はふたりにとっては簡単だったらしく、テストが大好きでした。
テストはもはやゲーム感覚。
低学年の頃のテスト内容は、文章を書いて答えるものはほぼありません。
毎回ほぼ満点をたたき出していました。

「テストをやりまーーす!!」
「イエーーーイ!!!!!!」

ふたりとも身を乗り出してのガッツポーズです。
その様子が毎回なんだか可笑しくて、私は笑ってしまいました。

「テストだよ?分かってる?」
「うん!!」

なかなか授業に集中できなくても、テストは紙面に向かって書き込むだけなので、もの凄い集中力でテストをやっていたのを思い出します。
ふたりで競争していたというのもあったのかもしれません。

そんな彼らも、3年生くらいになった頃でしょうか。

「テストをします!」
「えーーーー!!」

だんだんと嫌がるようになってしまったのです。
これが成長か…と思ったものです。

5年生、6年生の頃には、

「テストをします。」
「……。」

青ざめた表情のふたり。
身を乗り出して「イエーーーイ!!!!!!」とやっていたのは、もはや過去のこと。

「イエーーーイ!!って言わないの?」
「…テスト嫌です…」

大人になっていくのは当然のことなのですが、寂しさを感じた私です。
無邪気だった頃には戻れません。

小学校での月日は、あっという間に子どもを成長させるのです。