コーダ☆マインド

耳の聞こえない親を持つ聞こえるシオンが考える、コーダのことや手話のこと。

f:id:codamind:20211009221416j:plain

父(ろう者)を連れ出して散歩に行くことがあるのですが、池を見つけるたびに父は鯉を見つめます。
いちばん大きく太った鯉を見つけては、じっくりそいつを見続けるのです。
大きく太った鯉は動きものろいので、父はそれをじーーーーっと見ます。
鯉を見つめる父がなんだか面白いので、また違う池に連れていこうと思っています。

父は歳を取り、だんだんと足腰も弱ってきました。
気がつくと体も少し縮んだようです。
「小さくなった?」
と私が聞くと、父は微妙な表情で、「高齢」の手話をします。

父は私が生まれる前からずっとろう者です。
耳が聞こえないという障害を持って生きてきました。
おそらく、今よりずっと生きにくい時代だったでしょう。
聞こえない親と一緒にいると、社会の聞こえる人たちがいかに冷たいか感じることがあります。
差別や偏見も受けます。
聞こえないということへのあまりの無理解さに、うんざりするときもあります。

父がどんな経験をしてきて、どんな気持ちで生きてきたのか、しっかりと聞いたことが実は今までありません。
少しづつ聞いていこうかな…。
今ようやく、私にそんな気持ちが芽生えてきています。