コーダ☆マインド

耳の聞こえない親を持つ聞こえるシオンが考える、コーダのことや手話のこと。

ろう者はアポなしで家に来る。

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私が子どもの頃のことです。

電話ができないろう者たちは、友人のろう者の家にアポなしで行くのが普通でした。
FAXも無く、携帯電話のメールもまだ登場していない時代。
男女関係なく、みんな自転車に乗って、元気に友人宅を訪れます。

我が家にもろう者は唐突にやってきました。

手話が良く分からなかった幼かった私。
それでも、ろう者たちが手話で話す姿を見つめ、ときどき聞こえるデフボイスを聞きながら、同じ空間にいることが好きでした。
モードを切り替え、声を出しながら私に口話で話しかけてくるろう者もいました。
なつかしい思い出です。

自転車で我が家にやってきていたろう者は、そのうち姿を見せなくなりました。
高齢で亡くなってしまったのでしょう。
自分が歳をとっているのだから、当然と言えば当然なのですが、なんとも寂しく感じます。

両親の友人のろう者の家に行くのも好きでした。

ろう者の家にはパトライトが必ずあり、「うちと同じだ!」と思ったものです。
逆に聴者の家はほとんど行ったことがありませんでした。
両親の友人は、ろう学校時代のろう者の友人ばかりだったので。

何をして遊んだのかは覚えていませんが、その家のコーダと遊んだことも思い出しました。
記憶の奥にある思い出です。

子どものいないろう夫婦の家にも遊びに行きました。
可愛がってもらったのを覚えています。

手話ができなかった私は、ろう者たちとろくに話もできませんでしたが、それでも聞こえない世界の雰囲気は大好きで、とっても居心地のいい場所でした。
そのときの感覚を思い出すと、不思議と心がじわっとし、何とも言えぬなつかしさが胸の中に広がります。