コーダ☆マインド

耳の聞こえない親を持つ聞こえるシオンが考える、コーダのことや手話のこと。

手話サークルについてコーダの立場から考える その2

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コーダの立場から、手話サークルについて考えたことを書いています。

codamind.hatenablog.jp

「結婚/終わった?」

コーダが手話サークルに行きにくい…というか、聞こえない人に会うのがちょっぴりストレスに感じることがあります。
サークルにいる聞こえない人は、たいがい父と母の友人(ろう学校が一緒)で、コーダからすると親と同年代くらいのろう者はみんな親戚の人みたいな感覚です。
その人たちに会うと、あいさつ代わりに言われることばがこれです。

「結婚した?」

手話の場合、「結婚」「終わった」と手話単語を表出すると、「結婚した」という意味になります。
これを疑問形で言われるのです。
ろう文化は充分理解しているつもりです、ろう文化の中で育ってきましたから。
あいさつ代わりのようなものだとも充分承知しています。
……でも毎回それを聞かないでほしい。
「まだ」
って答えますけどね。
「早くしなさい!!」
って、本当に親戚のおばさんおじさんみたいになるろう者たち。
そうですねぇ……、早い方がいいと思いつつ日々が過ぎてるんですけどねぇ。
最近はろう者もあきらめたのか、聞かれなくなりました……。
「終わった?」
と聞かれるから、
「まだ」
と答えます(手話でね)。
これ、もしかして「まだ」って答える私が悪いんですかね。
「無い無い」
って返せばいいのか。
「まだ」って手話が反射的に出ちゃうんですよ。

ろう者ははっきりものを言う

なんでもストレートに言ってくるろう者に、コーダはちょっと疲れてしまう時があります。
「結婚/終わった?」
もそうですが、
「太った!!」・「痩せた!!」
もーー!!うるさい!(笑)
でも逆にストレートに言われることが心地良いと感じることもあります。
はっきり言ってくれた方が助かることもあるのは事実です。

聞こえない親のこと

これはかなり重要な部分……、「親の存在」です。
コーダの聞こえない親がどのような生き方をしてきたかによって、コーダも判断されてしまいがちです。
親のイメージがつきまとうのです。
親子であろうと別の人間なのですが、どうもそのあたりがひとくくりにされているような感じを受けることがあります。
極端な例ですが、例えば親が嫌われ者だった場合、その子どものコーダは、
「あなた/お母さん/いじわる!」(訳:あなたのお母さんいじわるよね!)とストレートに言われてしまうことがあります。
あなたのお母さんに、あんなことを言われた、こんなことを言われたと話してくるろう者って多い気がします。
本人に言いたいけど、本人に言えないからその子どもに言うんだろうとは思うんですが。
私の場合は、
「あなた/お父さん/頭いい!」(訳:あなたのお父さんは頭がいい人よね!)
と言われるのですが、娘の立場からするとその情報はいらないのです。
父がろう学校時代に勉強ができたかどうかなど、私には興味がありません……(お父さん、ごめんね……苦笑)。
良いことを言われているからいいじゃないかと思うかもしれませんが、良い悪いではなくて、「いつも親の話がでてくること」自体がそもそも面倒くさいといいますか……。
サークルに来てまで親の話をしなければならないのは、正直疲れます。
話しかけてくれるのは嬉しいですし、親のことを知ってくれているのもとても嬉しいのですが、私は手話サークルに親の話をしに行っているわけではありません。
しかしコーダは親ありきのコーダなので、親のイメージがいつでも付いて回る訳です。

2世タレントの気持ちが分かるコーダ

これって、あれです。
2世タレント
親が有名人でそのイメージが付いて回る2世タレントの感覚に似ているんです。
なので私は2世タレントが愚痴を言っている番組は結構好きで見てしまいます。
「親と私は違うのに。」
分かる分かる!とつい見入ってしまうのです。
何と言うか、親のイメージが先入観としてありすぎて、私自身を見てもらえてないような、ちょっと寂しい感じがするのです。
でも、親がいてくれるからこそこんなに声をかけてもらったり、親切にしてもらえるんだってことも分かってるんです。
親のことを話のきっかけにして、話しかけてくれる人もいます。
「お父さん元気?」
と心配してくれる人もいます。
手話学習者が自分の顔と名前を覚えてもらえるように、一生懸命ろう者に話しかけている様子やその苦労を私は知っているので、親の名前ですぐに憶えてもらえるコーダはその点は恵まれているとは思うのですが、複雑に感じることもあります。
田舎なので「〇〇の娘」で通ってしまいます……。
ろう者たちが、親のことを私に話してくれるのはコミュニケーションなのだとも充分理解しています。
「あなた/母/私/クラス/同じ」(訳:あなたのお母さんと同じクラスだったよ)
うん、それもう何回も聞きました。
それでも私は毎回笑顔でうなずくのです。

親へのクレーム

私の場合は父の行いが良かったらしく(この書き方で良いのか疑問……)、父に対してのクレームを受けることがありません。
その点は父に感謝しています。
誰からも嫌われもせず、ニコニコしている父。
ろう者からも聴者からも上手に好かれているなぁと娘としても思います。
しかし、他のコーダの話を聞くと、親もいろいろでコーダが参ってしまっているケースもあります。
聞こえない親がどのように人と接してきたか、どのような行いをしてきたかでコーダが生きやすくなったり生きにくくなったり。
それはどんな世界も同じかもしれませんが、聞こえない世界に関わるコーダも親の存在が見え隠れする中にいます。
親の評判が悪いと、コーダも同じような目で見られてしまいます。
みんな仲良くできたらいいんですけど。
難しいですね。

<この記事は2020年6月に書いたものを編集したものです>