コーダ☆マインド

耳の聞こえない親を持つ聞こえるシオンが考える、コーダのことや手話のこと。

コーダとレコードと辞典

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私の両親はろう者です。
全く耳が聞こえず、手話で話します。
ろう学校に通い、寄宿舎で育ち、ろう者同士で結婚し、聴覚障害者協会(ろう協)会員です。
家の中は聞こえない世界(ろう文化)です。

聞こえない両親は、聞こえる私と弟のためにたくさんのレコードや辞典を買ってくれました。
DVDなど無い時代です。
ビデオはVHSテープ。
カセットテープも本もいろいろ買ってくれました。
どこで買ってきたのか分かりませんが、英語の教材もありました。
特に『モクモク村のけんちゃん』は今でもよく覚えています。 

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自分たちが声で話せないからと、本当にたくさんの物を与えてくれました。
私も弟も何度も何度も同じレコードを聞き、同じ本を繰り返し読みました。
喋ることは苦手な私と弟でしたが、おかげで知識だけは増やすことができました。
弟はいつも昆虫図鑑や乗り物の本に夢中でした。
レコードは童謡が多かったです。
本は百科辞典と、日本昔ばなしのシリーズ。
今思えば、両親の深い愛情の証だったと分かります。
しかし、まんがだけは禁止されました。
「まんがは読むとバカになる、コーラを飲むと骨が溶ける」
と母がよく言っていたのを思い出します。
懐かしいです。
どこからそんな情報を聞いてきたのでしょうか。
携帯もスマホもない時代でした。
FAXもまだありませんでした。

我が家には、「会話」はありませんでした。
各々が自由に過ごして暮らしていた印象です。
レコードで曲を聴いたり歌ってみたり、本を読んでみたり。
テレビを見て過ごしたり。
「会話」というものに何の意味があるのかよく分からないまま、私は大人になりました。

そんな子ども時代を過ごしてきたことを時々思い出すと、胸の奥がきゅっとします。

<この記事は2020年2月にnoteに書いたものを編集しています>